住宅の快適さを左右する要素のひとつが断熱材です。近年では断熱性能が重視されるようになり、素材や工法に注目が集まっています。しかし、断熱材は突然生まれたものではなく、住まいの考え方や暮らし方の変化とともに発展してきました。本記事では、断熱材の種類と歴史を整理しながら、近年注目される木繊維断熱材についても解説します。
住まいを支える断熱材の主な種類
断熱材にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。まずは、現在の住宅で使われている代表的な断熱材について見ていきましょう。
繊維系断熱材の特徴と使われ方
繊維系断熱材は、細かな繊維の間に空気を含ませることで、熱を伝えにくくする仕組みを持っています。代表的なものとしては、グラスウールやロックウールなどの無機質系と、セルロースファイバーや羊毛、木繊維といった天然繊維系があります。比較的やわらかく加工しやすいため、壁や天井などさまざまな部位に施工しやすい点が特徴です。とくにグラスウールは、長い間多くの住宅で使われてきた実績があり、コストと性能のバランスを重視する場面で選ばれてきました。
発泡プラスチック系断熱材の性能と特性
発泡プラスチック系断熱材は、プラスチック素材のなかに微細な気泡を閉じ込めた構造をしています。この気泡が熱の移動を抑え、高い断熱性能を発揮します。硬質ウレタンフォームやポリスチレンフォーム、フェノールフォームなどが代表例です。水を吸いにくく、性能が安定しやすい点が評価され、基礎部分や外壁などにも幅広く使われています。一方で、石油由来の原料を使うため、環境への配慮という点では課題も指摘されています。
天然素材系断熱材が注目される理由
天然素材系断熱材は、自然由来の素材を加工して作られています。コルクや木などが代表的で、調湿性能ややさしい肌ざわりを持つ点が特徴です。近年では、住まいの快適さだけでなく、環境負荷の低さや健康面への配慮を重視する人が増えたことで、天然素材系の断熱材に関心が集まっています。化学物質の使用をできるだけ抑えたいと考える方にとって、選択肢のひとつとなっています。
日本の住宅における断熱材の歴史
現在では当たり前のように使われている断熱材ですが、日本の住宅では長い時間をかけて少しずつ普及してきました。その背景を振り返ってみましょう。
断熱という考え方がなかった時代
1950年代以前の日本の住宅では、断熱という概念はほとんど重視されていませんでした。「夏を涼しく過ごす」ことが重視され、風通しを良くする間取りや構造が主流だったのです。そのため、冬は寒さを我慢するのが当たり前とされていました。厚着や火鉢などで寒さをしのぐ生活が一般的だったのです。
グラスウール普及による大きな転換
戦後になると、北海道を中心に防寒対策の必要性が高まり、断熱材としてグラスウールが導入されました。これが、日本の住宅における断熱材普及の大きなきっかけです。1970年代のオイルショックを経て、省エネルギーへの関心が全国的に高まり、断熱性能の重要性が広く認識されるようになりました。この時期から、本州以南の住宅でも断熱材が使われるようになり、住まいの性能に対する意識が大きく変わっていきます。
高性能化と多様化が進んだ時代
1990年代以降になると、省エネ基準の整備が進み、住宅に求められる断熱性能はさらに高まりました。断熱材もグラスウールだけでなく、発泡プラスチック系など多様な選択肢が登場します。この頃から、単に寒さ暑さを防ぐだけでなく、結露対策や耐久性、施工性といった点も重視されるようになり、断熱材は住まいづくりの重要な要素として位置付けられるようになりました。
木繊維断熱材が生まれた背景
数ある断熱材のなかでも、近年注目を集めているのが木繊維断熱材です。その誕生の背景には、環境や暮らしに対する考え方の変化があります。
木材を無駄にしない発想からの誕生
木繊維断熱材は、主にヨーロッパ、とくにドイツで発展してきました。製材の過程で出る端材や木粉を有効活用できないかという発想から生まれた素材です。木が本来持っている熱を蓄える性質や湿気を調整する力に着目し、断熱材として活かす研究が進められました。その結果、断熱性能だけでなく、住環境全体を快適に保つ素材として評価されるようになりました。
環境意識と健康志向が後押し
木繊維断熱材は、製造時に必要なエネルギーが比較的少なく、再利用やリサイクルが可能な点も特徴です。こうした性質は、環境への負担を減らしたいという考え方と相性が良いとされています。また、化学物質の使用が抑えられているため、住む人の健康への影響を気にする方からも注目されています。自然素材を取り入れた住まいづくりを考える流れのなかで、木繊維断熱材は次第に存在感を高めていきました。
まとめ
断熱材は、住宅の快適性を支える重要な存在であり、その種類や性能は時代とともに進化してきました。日本では、断熱という考え方がなかった時代を経て、省エネルギー意識の高まりとともに多様な断熱材が使われるようになっています。近年注目される木繊維断熱材は、断熱性能だけでなく、環境や健康への配慮という新しい価値観から生まれた素材です。住まいづくりを考える際には、断熱材の歴史や特徴を理解したうえで、自分たちの暮らしに合った選択をすることが大切です。
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